1. 冷え性と血行不良について：そのメカニズムと現代人の課題

1.1. 冷え性の定義と血行不良がもたらす身体への影響

「冷え性」とは、多くの方が経験する、手足の末端や腰、お腹などが慢性的に冷たく感じる状態を指します。これは単なる体感の問題だけでなく、血行不良が根本的な原因となっている場合が多く、様々な身体の不調に繋がる可能性があります。血液は全身に酸素や栄養素を届け、老廃物を回収する重要な役割を担っています。そのため、血行が滞ると、細胞への栄養供給が十分に行き渡らず、新陳代謝の低下を招くことがあります。これにより、肩こり、むくみ、疲労感、肌のコンディションの乱れ、体調を崩しやすくなるなど、多岐にわたる状態が引き起こされる可能性があります。特に、女性に多く見られるこの状態は、日々の生活の質（QOL）に影響を与える要因となり得ます。

1.2. 冷え性の主な原因：生活習慣と体の変化

冷え性の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じることが一般的です。主な要因として、以下のようなものが挙げられます。

•自律神経のバランスの乱れ: ストレス、不規則な生活、睡眠不足などは自律神経のバランスに影響を与え、血管の収縮・拡張のコントロールが乱れがちになります。これにより、血流が悪化し、冷えを感じやすくなることがあります。

•筋肉量の不足: 筋肉は体内で熱を産生する主要な器官の一つです。一般的に女性は男性に比べて筋肉量が少ない傾向にあるため、熱産生が比較的少なく、冷えやすい体質であると考えられています。運動不足も筋肉量の低下に繋がります。

•食生活の偏り: 体を冷やすとされる飲食物の過剰な摂取や、栄養バランスの偏りも血行に影響を与える可能性があります。特に、鉄分が不足すると、酸素運搬能力の低下を通じて冷えを感じやすくなることがあります。

•ホルモンバランスの変化: 女性の場合、月経周期や更年期などにおけるホルモンバランスの変動が、自律神経の働きに影響を与え、冷えに繋がることがあります。

•外的要因: 薄着や冷房の効いた環境に長時間いることも、体温調節機能に影響を与え、冷えを助長する要因となります。

これらの要因が複合的に作用することで、体の末端まで温かい血液が届きにくくなり、慢性的な冷えの状態に繋がっていくと考えられています。サプリメントは、これらの要因に対して内側からアプローチし、健やかな体づくりをサポートする選択肢の一つとなり得ます。

2. 科学的知見に基づく冷え性・血行不良対策サプリメント成分

冷え性や血行不良への対策として、特定の栄養素や植物由来成分が科学的にその有用性が研究されています。ここでは、主要なサプリメント成分とその働き、期待される役割、そして科学的背景について詳しく解説します。

2.1. 巡りをサポートする成分：DHA・EPA

**DHA（ドコサヘキサエン酸）とEPA（エイコサペンタエン酸）**は、青魚に豊富に含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸です。これらは体内で生成されにくいため、食事やサプリメントからの積極的な摂取が推奨される必須脂肪酸です[1]。EPAは血液の粘度を健やかに保ち、DHAは血管の柔軟性をサポートすることで、スムーズな巡りに貢献すると言われています[1]。これらの相乗効果により、全身の血流がサポートされ、体の隅々まで酸素や栄養素が効率良く運ばれることが期待されます。結果として、末梢の冷え感の緩和や、血行不良に起因する肩こり、むくみなどの悩みの軽減に繋がる可能性があります。

2.2. 血管の健康をサポートする成分：ビタミンEとポリフェノール

ビタミンEは、その強力な抗酸化作用で知られています。体内で発生する活性酸素から体を守り、血管の酸化ストレスを軽減することで、血管の健康維持に貢献します[3]。ポリフェノールもまた、植物由来の強力な抗酸化成分であり、活性酸素によるダメージから血管を守る働きが期待されています。これらの成分は、血管の健康を保ち、しなやかな状態を維持することで、良好な血流をサポートします[4]。

2.3. 血管のしなやかさをサポートする成分：シトルリン

シトルリンは、スイカなどに含まれるアミノ酸で、体内で一酸化窒素（NO）の生成をサポートする働きがあります。NOは血管を拡張させ、血流をスムーズにする役割を担っており、シトルリンの摂取は、このNOの働きを助けることで、血流量の増加と全身の血行改善に貢献することが期待されています[7]。これにより、体の末端まで温かい血液が届きやすくなり、冷え感の緩和に繋がる可能性があります。

2.4. 末梢の血流をサポートする成分：イチョウ葉エキス、ヒハツ、モノグルコシルヘスペリジン

•イチョウ葉エキス: 特有成分である「フラボノイド配糖体」や「テルペンラクトン」を含み、血液の粘度を健やかに保ち、血管を拡張することで、特に末梢の血流をサポートする働きが期待されています[9]。

•ヒハツ: 機能性関与成分「ヒハツ由来ピペリン類」が、血管を広げ、血流機能をサポートすることで、冷えによる手足の皮膚表面温度の低下を和らげることが報告されています[10]。

•モノグルコシルヘスペリジン: 柑橘類由来のポリフェノールで、寒い季節や冷房などにより低下した手先・足先の末梢血流を正常に整え、冷えによる皮膚表面温度の低下を和らげる機能が報告されています[11]。

2.5. 体を温める伝統的成分：生姜と高麗人参

生姜に含まれるジンゲロールやショウガオール、高麗人参に含まれるジンセノサイドといった成分は、古くから体を温め、血行をサポートする目的で利用されてきました。これらの成分は、体の内側から熱産生を促し、全身の巡りを健やかに保つ手助けをすると考えられています[12, 13]。

2.6. 代謝をサポートし体温維持を助ける：ビタミンB群

ビタミンB群は、食事から摂取した栄養素をエネルギーに変換する「代謝」の過程で重要な役割を果たします。代謝がスムーズに行われることで、体内で効率的に熱が産生され、体温が適切に維持されます。また、ビタミンB6、B12、葉酸は赤血球の形成に関与しており、健康な血液を維持するためにも不可欠です[1]。

3. 冷え性・血行不良対策サプリメントの効果的な選び方と推奨商品

自分に合ったサプリメントを選ぶことは、対策を効果的に進める上で重要です。ここでは、サプリメント選びのポイントと、目的別・年代別のおすすめ成分について解説します。

3.1. サプリメント選びのポイント：成分、品質、安全性

•配合成分: ご自身の体の状態や目的に合わせて、適切な成分が配合されているかを確認しましょう。

•科学的根拠: 「機能性表示食品」など、科学的根拠に基づいて機能性が表示されている製品は、選択の一つの目安になります。

•品質と安全性: GMP認定工場での製造など、品質管理が徹底されている製品を選ぶとより安心です。

•継続のしやすさ: 価格や形状が、ご自身にとって無理なく続けられるものを選びましょう。

3.2. 目的別・年代別おすすめ成分

•若年層（20代〜30代）: DHA・EPA、ビタミンB群、シトルリンなど、巡りと代謝のサポートを重視した成分がおすすめです。

•中年層（40代〜50代）: ビタミンE、ポリフェノール、イチョウ葉エキスなど、抗酸化作用と血管の健康維持をサポートする成分が適しています。

•高齢層（60代以上）: ヒハツ、モノグルコシルヘスペリジン、イチョウ葉エキスなど、末梢の血流を重点的にサポートする成分がおすすめです。

具体的な商品例

以下に、上記で解説した成分を含む代表的な商品をいくつかご紹介します。これらはあくまで一例であり、購入の際はご自身の体質やアレルギーなどを考慮し、医師や薬剤師にご相談ください。

•DHC 濃縮DHA: DHA・EPAを手軽に摂取できるサプリメント。

•ファンケル どこでも鉄＆葉酸: 鉄分と葉酸を補給し、貧血気味の方の健康をサポート。

•小林製薬 血管を強くするEPA: EPAを主成分とする機能性表示食品。

•協和発酵バイオ シトルリン: 高純度シトルリンを配合。

•ファンケル 冷えケア: 「ヒハツ由来ピペリン類」を配合した機能性表示食品。

4. サプリメントの正しい摂取方法とタイミング

サプリメントの力を最大限に活かすためには、適切な摂取方法とタイミングが大切です。多くのサプリメントは、消化吸収が活発になる食後の摂取が推奨されます。特に脂溶性の成分は、食事の油分と一緒に摂ることで吸収が高まります。水溶性のビタミンB群やCは、1日2〜3回に分けて摂取すると、体内の濃度を一定に保ちやすくなります。何よりも、毎日継続して摂取することが、体感に繋がる最も重要なポイントです。

5. 知っておきたい注意点：安全な利用のために

サプリメントは健康食品ですが、過剰摂取は避けるべきです。製品に記載された摂取目安量を必ず守りましょう。特に、DHA・EPAやビタミンEの過剰摂取は、出血傾向を高める可能性が指摘されています[19]。また、医薬品を服用中の方は、サプリメントとの相互作用に注意が必要です。例えば、抗凝固剤とDHA・EPAやイチョウ葉エキス、降圧剤とシトルリンなどの組み合わせは、作用を強めすぎる可能性があります。摂取を開始する前に、必ず医師や薬剤師に相談してください。アレルギー体質の方も、原材料を十分に確認することが大切です。

6. サプリメントと生活習慣の相乗効果

サプリメントは、あくまで健康的な生活習慣を補うものです。その効果を最大限に引き出すためには、以下の点を意識することが相乗効果に繋がります。

•食事: 体を温める食材（根菜類、生姜など）を積極的に取り入れ、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。

•運動: ウォーキングやストレッチなど、適度な運動で筋肉量を維持し、血行を促進しましょう。

•睡眠: 質の良い睡眠で自律神経のバランスを整え、体温調節機能を正常に保ちましょう。

•入浴: 湯船に浸かる習慣は、体を芯から温め、リラックス効果も期待できます。

7. まとめ：体の中から健やかさを育み、快適な毎日へ

本記事では、冷え性や血行不良対策に役立つとされるサプリメント成分について、科学的知見を交えて解説しました。DHA・EPA、ビタミン類、ポリフェノール、シトルリン、ヒハツなど、様々な成分がそれぞれの働きで、健やかな巡りをサポートします。しかし、サプリメントは「治療薬」ではありません。深刻な不調を感じる場合は、必ず医療機関を受診してください。サプリメントを、バランスの取れた食事や適度な運動といった良い生活習慣と組み合わせ、体の中から温まる健やかな体づくりを目指しましょう。この記事が、皆様の快適で活動的な毎日の一助となれば幸いです。

8. 参考文献

[1] natural tech Lifestyle. (2025). 血流を良くするサプリとは？. [2] natural tech Lifestyle. (2025). 血流改善サプリに求める栄養素ランキング. [3] 日本ビタミン学会. (n.d.). ビタミンE の新しい機能と安全性. [4] 大塚製薬. (n.d.). ポリフェノールとは？. [5] 日本ビタミン学会. (n.d.). ビタミン E の臨床研究の流れとトピックス. [6] 株式会社 明治. (n.d.). カカオポリフェノールとは？. [7] 協和発酵バイオの健康成分研究所. (n.d.). シトルリンのはたらきと効果-01. [8] 協和発酵バイオの健康成分研究所. (n.d.). シトルリンのはたらきと効果-03. [9] 楽天市場. (n.d.). イチョウ葉エキスの効果と副作用. [10] 楽天市場. (n.d.). ヒハツに含まれるピペリンの効果. [11] DHC. (n.d.). サプリセレクション｜Vol.12 冷え. [12] 木村公喜. (2012). 生姜摂取と健康づくり. [13] 高麗人参健康食品. (n.d.). 高麗人参の効能と効果. [14] CiNii Research. (n.d.). ショウガ摂取がヒトの末梢表面温度および末梢血流に及ぼす影響. [15] 高麗人参健康食品. (n.d.). ジンセノサイドとは？. [16] 日本新薬株式会社. (2023). DHAとEPAは寝る前に摂る？. [17] Recella Terrace. (2023). サプリメントを飲むタイミングはいつ？. [18] natural tech Lifestyle. (2025). 血流を良くするサプリとは？. [19] 全日本民医連. (2016). くすりの話 194 サプリメント編. [20] AGAケアクリニック. (2025). 亜鉛サプリメントの副作用と過剰摂取の注意点.