1. 導入:現代社会とメラトニンへの高まる関心
現代社会は、ストレス、不規則な生活リズム、夜間のデジタルデバイス使用など、睡眠を妨げる多くの要因に満ちています。質の高い睡眠は、心身の健康維持と日中の活動パフォーマンス向上に不可欠であるにもかかわらず、多くの人々が睡眠に関する悩みを抱えています。このような背景から、自然な睡眠をサポートする成分として「メラトニン」が世界的に注目を集めています。
メラトニンは、私たちの脳の松果体から自然に分泌される「睡眠ホルモン」であり、体内時計(概日リズム)の調整に重要な役割を担っています。しかし、加齢や生活習慣の乱れによってその分泌量は減少し、睡眠の質の低下につながることがあります。このため、メラトニンをサプリメントとして補うという選択肢が、特に睡眠に問題を抱える人々にとって関心事となっています。
本記事では、メラトニンサプリメントについて、科学的根拠に基づいた客観的な視点からその効果と安全性を徹底的に分析します。国内外の臨床試験データや専門機関の見解を引用し、どのような人にとって有用である可能性があり、どのように使用すれば安全かつ効果的なのかを詳しく解説します。読者の皆様が自身の健康管理において、情報に基づいた賢明な判断を下すための一助となることを目的としています。
2. メラトニンの基本情報と体内での働き
メラトニンは、脳の松果体から主に夜間に分泌されるホルモンであり、私たちの体内時計、すなわち概日リズムの調整において中心的な役割を担っています。光の刺激が減少すると分泌が促進され、体温の低下や眠気の誘発を通じて、体を睡眠に適した状態へと導きます。
メラトニンが睡眠に作用するメカニズムは、主に2つの受容体サブタイプ、MT1受容体とMT2受容体への作用を介しています。MT1受容体の活性化は直接的な催眠作用に関与し、入眠を促進します。一方、MT2受容体の活性化は、視床下部の視交叉上核によって制御される概日リズムの位相シフト、つまり体内時計の調整に関与し、睡眠・覚醒サイクルを整える効果を発揮します [1]。
これらの作用により、メラトニンは単に眠気を誘うだけでなく、生体リズムを整えることで自然な睡眠パターンをサポートすると考えられています。
3. 科学的根拠の詳細分析:臨床試験と専門機関の見解
メラトニンサプリメントの有効性については、様々な臨床研究が行われています。ここでは、主要な研究結果と専門機関の見解を基に、その科学的根拠を詳細に分析します。
小児期の神経発達症に伴う睡眠障害への効果
小児期の神経発達症(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など)を持つ子どもたちは、睡眠障害を併発することが多く、その治療法が模索されています。メラトニンは、この分野において特に有望な選択肢として注目されています。
2000年頃から実施されたプラセボ対照無作為化比較試験を対象としたメタアナリシスでは、13報、計682例(1~18歳)の小児を検討した結果、メラトニンはプラセボと比較して総睡眠時間および入眠潜時を有意に改善したと報告されています。また、重篤な有害事象は認められませんでした。診断分類別の検討では、知的能力障害および自閉スペクトラム症では総睡眠時間および入眠潜時で、注意欠如・多動症では入眠潜時で、メラトニンがプラセボに対して有意な改善を示しました [1]。
欧州小児神経学会は、2014年に開催された会議で、小児におけるメラトニンの役割と治療ガイドラインに関するコンセンサスを公表しています。この中で、メラトニンは不眠障害の入眠困難および概日リズム睡眠-覚醒障害群の睡眠相後退型に対する有効性において最も高いエビデンスがあると結論づけられています。特に、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、知的能力障害などの神経発達症のある小児では睡眠障害を有することが多く、メラトニン治療が有益であるとされています [1]。
成人における不眠症への効果
成人におけるメラトニンの不眠症への効果については、小児の場合と比較してより慎重な見解が示されています。厚生労働省のeJIM(「統合医療」情報発信サイト)によると、2017年に公表された米国睡眠医学会および2016年に公表された米国内科学会の診療ガイドラインでは、慢性不眠症に対するメラトニンサプリメントの有効性や安全性について、その使用を推奨するほどの強いエビデンスはないとされています。米国内科学会のガイドラインでは、不眠症の初期治療として、不眠症の認知行動療法(CBT-I)の利用を強く推奨しています [2]。
一方で、メイヨークリニックの報告では、メラトニンサプリメントは睡眠を促進し、短期間の使用であれば安全であることが示唆されています [3]。また、2013年のメタアナリシスでは、メラトニンが入眠潜時を短縮し、総睡眠時間を増加させ、全体的な睡眠の質を改善することが示されています [4]。
成人における高用量メラトニンの安全性に関する2022年のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、高用量(10mg以上)のメラトニンに関する研究は限定的であるものの、全体的に良好な安全性プロファイルを持つことが示唆されています。ただし、眠気、頭痛、めまいなどの有害事象のリスクが増加する可能性も指摘されており、長期的な安全性についてはさらなる研究が必要とされています [5]。
時差ぼけへの効果
メラトニンは、概日リズムを調整する作用があるため、時差ぼけ(時差症候群)の改善にも有効である可能性が指摘されています。厚生労働省eJIMによると、メラトニンサプリメントは時差ぼけに対して有用である可能性があるとされています [2]。これは、メラトニンが体内時計を新しいタイムゾーンに順応させるのを助けるためと考えられます。
4. メラトニン摂取により期待できる健康効果と作用機序
メラトニンサプリメントの摂取により期待される主な健康効果は、その生理的な役割に基づいています。
•睡眠の質の向上:メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンであり、夜間に自然な眠気を誘発し、入眠を促進します。サプリメントとして摂取することで、特に分泌量が低下している人や、概日リズムが乱れている人において、入眠時間の短縮、中途覚醒の減少、総睡眠時間の延長といった睡眠の質の改善が期待されます。これは、MT1受容体への作用による直接的な催眠効果と、MT2受容体への作用による体内時計の調整効果によるものです [1]。
•概日リズムの調整:メラトニンは、体内時計のマスタークロックである視交叉上核に作用し、睡眠・覚醒サイクルを調整します。これにより、時差ぼけや交代勤務による睡眠リズムの乱れを正常化し、規則正しい睡眠習慣の確立をサポートする効果が期待されます [2]。
•抗酸化作用・抗炎症作用:メラトニンは、睡眠調節作用だけでなく、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持つことが知られています。体内の活性酸素を除去し、細胞の損傷を防ぐことで、様々な疾患のリスク低減に寄与する可能性が示唆されています。これらの作用は、睡眠の質改善とは異なる、メラトニン自体の生理的な機能として補足的に理解されています [6]。
5. メラトニンが不足しやすい人の特徴と症状
メラトニンの分泌量は、個人の生活習慣や年齢、特定の健康状態によって変動します。特に以下のような特徴を持つ人々は、メラトニンが不足しやすく、睡眠の質の低下や概日リズムの乱れを経験しやすい傾向にあります。
•加齢によるメラトニン分泌量の減少:メラトニンの分泌は思春期にピークを迎え、その後は加齢とともに徐々に減少していきます。高齢者ではメラトニン分泌量が若年層に比べて著しく低下するため、入眠困難や中途覚醒といった睡眠障害のリスクが高まります [2]。
•不規則な生活習慣、夜間の光曝露が多い人:メラトニンは暗闇で分泌が促進されるため、夜間に強い光(特にブルーライトを発するスマートフォンやPCの画面)を浴びる生活習慣は、メラトニンの分泌を抑制し、体内時計を乱す原因となります。交代勤務者や夜型生活を送る人も、自然なメラトニン分泌リズムが崩れやすい傾向にあります。
•特定の疾患を持つ人:神経発達症(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など)を持つ小児は、睡眠障害を併発することが多く、メラトニン分泌の異常が関与している可能性が指摘されています [1]。また、うつ病などの精神疾患を持つ人も、睡眠リズムの乱れとともにメラトニン分泌に異常が見られることがあります。
•時差ぼけ、交代勤務者:異なるタイムゾーンへの移動や、夜勤などの交代勤務は、体内時計と外部環境の間にずれを生じさせ、メラトニン分泌のリズムを大きく乱します。これにより、日中の眠気や夜間の不眠といった症状が現れやすくなります。
これらの特徴に当てはまる人は、メラトニンサプリメントの摂取が睡眠の質の改善に役立つ可能性がありますが、自己判断せずに専門家への相談が推奨されます。
6. メラトニンサプリメントの副作用・注意点・相互作用
メラトニンサプリメントは、一般的に短期間の使用であれば安全性が高いとされていますが、いくつかの副作用や注意点、薬物相互作用が存在します。特に、サプリメントとして利用する際には、これらの情報を十分に理解し、慎重に使用することが重要です。
一般的な副作用
メラトニンサプリメントの短期使用において報告されている一般的な副作用は、通常軽度なものです。厚生労働省eJIMおよびPubMedのレビューによると、以下のような症状が挙げられます [2, 5]。
•眠気:日中の過度な眠気や倦怠感が生じることがあります。特に高齢者では、メラトニンが体内で長く活性を維持するため、日中の眠気を引き起こしやすいとされています [2]。
•頭痛:頭痛の発生が報告されています [2, 5]。
•めまい:めまいを感じることがあります [2, 5]。
•悪心:吐き気を感じることがあります [5]。
•興奮:小児において興奮が報告されることがあります [2]。
•夜尿症や夜間尿の増加:小児で報告されています [2]。
長期的な副作用については、まだ十分な情報が不足しており、さらなる研究が必要です [2]。
小児への安全性
小児へのメラトニン使用に関しては、特に注意が必要です。米国では、メラトニンサプリメントの販売量と入手しやすさが増加した結果、小児の偶発的または意図的な過剰摂取のリスクが高まっていることが報告されています。2012年から2020年の間に、米国毒物管理センターへのメラトニン関連の報告件数は大幅に増加し、特に5歳以下の小児における入院が最も大きく増加しました [2]。
小児にメラトニンを与えることを検討している場合は、必ず事前に医療機関に相談し、適切な指導のもとで使用することが不可欠です。保護者は、サプリメントを安全に保管し、適切に使用する責任があります [2]。
薬との相互作用
他のダイエタリーサプリメントと同様に、メラトニンは特定の薬剤と相互作用を起こす可能性があります。薬を服用している人は、メラトニンを使用する前に必ず医師や薬剤師に相談してください。特に以下の薬剤との併用には注意が必要です [2]。
•血液希釈剤(抗凝固薬):メラトニンは血液凝固に影響を与える可能性があり、血液希釈剤との併用は出血のリスクを高める可能性があります。
•てんかん薬:てんかんを持つ人がメラトニンを使用する際には、医師の指導のもとで行う必要があります。
•免疫抑制剤:メラトニンは免疫系に影響を与える可能性があるため、免疫抑制剤を服用している場合は注意が必要です。
•糖尿病治療薬:メラトニンが血糖値に影響を与える可能性が示唆されています。
•血圧降下薬:メラトニンが血圧に影響を与える可能性があります。
特定の集団への注意
•妊娠中および授乳中の女性:妊娠中や授乳中の女性におけるメラトニン使用の安全性については、十分な研究が行われていません。そのため、使用は推奨されません [2]。
•高齢者:高齢者ではメラトニンが体内で長く活性を維持し、日中の眠気を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。特に、米国睡眠医学会のガイドラインでは、認知症の人のメラトニン使用は控えるように推奨されています [2]。
サプリメントの品質問題と日本の法規制
米国ではメラトニンがダイエタリーサプリメントとして規制されており、処方薬や市販薬に比べて規制が緩い現状があります。このため、製品ラベルに記載されているメラトニンの量と実際の含有量が一致しないケースや、中には有害な影響を及ぼす可能性のあるセロトニンが混入している製品も報告されています [2]。
**日本では、メラトニンは医薬品として扱われており、医師の処方箋なしに購入することはできません。**海外から個人輸入されたメラトニンサプリメントは、日本の医薬品医療機器等法(薬機法)の規制対象外であり、品質や安全性が保証されていない可能性があります。信頼できるメーカーの製品を選び、品質表示をよく確認することが重要ですが、日本国内での購入はできません。
7. メラトニンサプリメントの賢い選び方と注意点
メラトニンサプリメントを選ぶ際には、その品質と安全性を確保するためにいくつかの重要なポイントがあります。特に、日本ではメラトニンが医薬品として扱われるため、海外製品を個人輸入する際には注意が必要です。薬機法に配慮し、具体的な商品名の推奨は避け、一般的な製品選びの基準を提示します。
•信頼できるメーカーの選択:製品の品質管理体制がしっかりしている、実績のあるメーカーを選ぶことが重要です。第三者機関による品質認証を受けている製品は、より信頼性が高いと言えます。
•成分表示の確認:製品ラベルに記載されているメラトニンの含有量が正確であるか、不純物や不要な添加物が含まれていないかを確認しましょう。特に、厚生労働省eJIMが指摘するように、表示量と実際の含有量に乖離がある製品や、セロトニンなどの有害な成分が混入しているケースも報告されているため、注意が必要です [2]。
•適切な用量表示:製品に記載されている1回あたりの摂取量が、推奨される範囲内であるかを確認します。過剰摂取のリスクを避けるためにも、明確な用量表示がある製品を選びましょう。
•剤形と吸収性:メラトニンサプリメントには、錠剤、カプセル、液体、グミなど様々な剤形があります。速放性(すぐに効果が現れる)と徐放性(効果が持続する)があり、自身の睡眠の悩みに合わせて選択することが可能です。例えば、入眠困難が主な場合は速放性、中途覚醒が多い場合は徐放性が適している場合があります。
•アレルギー物質の確認:アレルギー体質の方は、製品に含まれる原材料をすべて確認し、アレルギー物質が含まれていないか注意しましょう。
これらのポイントを踏まえ、自身の体質や目的に合った製品を慎重に選ぶことが、安全かつ効果的なメラトニンサプリメントの利用につながります。
8. メラトニンサプリメントの摂取方法と最適なタイミング
メラトニンサプリメントの効果を最大限に引き出し、安全に利用するためには、適切な摂取方法とタイミングが重要です。
•推奨摂取量:成人におけるメラトニンの推奨摂取量は、個人差が大きいですが、一般的には0.5mgから1mgの低用量から開始し、必要に応じて徐々に増量することが推奨されています。多くの人にとって効果的な用量は1mgから3mgの範囲であり、5mgを超える用量を必要とすることは稀です。専門家は、一度に10mgを超えるメラトニンを摂取しないよう忠告しています [7]。低用量から始めることで、体がどのように反応するかを確認し、日中の眠気や鮮明な夢などの潜在的な副作用のリスクを軽減できます。
•摂取タイミング:メラトニンは、就寝時間の30分から60分前に摂取するのが最も効果的です [7]。この時間帯に摂取することで、サプリメントが体内に吸収され、自然なメラトニンレベルの上昇とともに、体がリラックスして眠りにつく準備が整います。摂取タイミングが早すぎたり遅すぎたりすると、かえって睡眠・覚醒サイクルを乱す可能性があるため、注意が必要です。
•低用量から開始し、効果を見ながら調整:メラトニンの効果は個人差が大きいため、まずは最も低い推奨用量から始め、自身の体の反応を観察しながら、必要に応じて用量を微調整していくことが賢明です。効果が感じられない場合でも、急激な増量は避け、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
9. 他の栄養素との相乗効果:睡眠の質を高める組み合わせ
メラトニンは単独で効果を発揮しますが、特定の栄養素と組み合わせることで、その効果が相乗的に高まる可能性があります。これらの栄養素は、メラトニンの生成をサポートしたり、睡眠の質を向上させる別のメカニズムで作用したりすることで、総合的な睡眠改善に寄与します。
•トリプトファン:メラトニンの前駆体である必須アミノ酸です。体内でトリプトファンからセロトニンが生成され、さらにセロトニンからメラトニンが合成されます。したがって、トリプトファンを十分に摂取することは、メラトニンの体内での生成を促進するために重要です [8]。
•ビタミンB6:トリプトファンがセロトニンに変換される過程で不可欠な補酵素です。ビタミンB6が不足すると、トリプトファンからセロトニン、そしてメラトニンへの変換効率が低下する可能性があります。トリプトファンとビタミンB6を一緒に摂取することで、メラトニン合成の相乗効果が期待できます [9]。
•マグネシウム:神経系の機能に深く関与しており、筋肉のリラックスやストレス軽減に役立つミネラルです。マグネシウムは、GABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の活性を高めることで、鎮静作用をもたらし、睡眠の質を向上させると考えられています。メラトニンと直接的な相乗効果があるわけではありませんが、間接的に睡眠環境を整える上で重要な役割を果たします。
•ビタミンD:メラトニンとビタミンDは、抗炎症作用や免疫調節作用において相乗効果を持つ可能性が示唆されています [10]。特に、皮膚において紫外線B波(UV-B)が7-デヒドロコレステロールをビタミンDに変換する過程で、メラトニンも生成されることが研究で示されており、両者が協調して作用する可能性が指摘されています [11]。
•セレン:強力な抗酸化作用を持つミネラルであり、メラトニンもまた抗酸化物質として機能します。セレンとメラトニンは、酸化ストレスから細胞を保護する作用において相乗効果を発揮することが示されています [12]。
これらの栄養素をバランス良く摂取することは、メラトニンサプリメントの効果を補完し、より良い睡眠と全体的な健康維持に貢献する可能性があります。
10. 専門家の見解とまとめ:メラトニンサプリメントの適切な活用
メラトニンは、私たちの体内時計を調整し、自然な睡眠を促す重要なホルモンであり、サプリメントとしての利用は、特定の状況下で睡眠の質の改善に寄与する可能性があります。しかし、その効果と安全性については、科学的根拠に基づいた慎重な理解が必要です。
特に、小児期の神経発達症に伴う睡眠障害に対しては、メラトニンが総睡眠時間の延長や入眠潜時の短縮に有意な効果を示すという強力なエビデンスが存在します [1]。欧州小児神経学会も、この分野におけるメラトニンの有効性を高く評価しています [1]。
一方、成人における慢性不眠症に関しては、米国睡眠医学会や米国内科学会は、メラトニンサプリメントの使用を強く推奨するほどの十分なエビデンスはないとしており、不眠症の認知行動療法(CBT-I)を第一選択としています [2]。ただし、短期間の使用であれば安全であり、入眠潜時の短縮や睡眠の質の改善に役立つ可能性も示唆されています [3, 4]。時差ぼけに対しても、概日リズム調整作用による効果が期待されます [2]。
メラトニンサプリメントの安全性については、低用量での短期使用は概ね安全とされていますが、日中の眠気、頭痛、めまいなどの軽度な副作用が報告されています [2, 5]。高用量や長期使用に関する安全性データはまだ不足しており、特に小児における過剰摂取のリスクや、特定の薬剤との相互作用には十分な注意が必要です [2]。妊娠中・授乳中の女性や認知症の高齢者への使用は推奨されません [2]。また、サプリメントの品質にはばらつきがあるため、信頼できる製品選びが不可欠です [2]。
結論として、メラトニンサプリメントは、特に小児の神経発達症に伴う睡眠障害や、一時的な時差ぼけ、あるいは医師の指導のもとでの短期間の不眠改善には有用な選択肢となり得ます。しかし、万能薬ではなく、安易な自己判断での使用は避けるべきです。睡眠に関する悩みがある場合は、まず専門医に相談し、生活習慣の改善やCBT-Iなどの非薬物療法を検討することが重要です。サプリメントを使用する際は、適切な用量とタイミングを守り、品質の確かな製品を選ぶことが、安全かつ効果的な利用の鍵となります。
参考文献
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